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激震!?小林化工の睡眠剤混入問題のまとめ【時系列、問題点、処分など】

最近、製薬業界ではかなり話題になっている小林化工の睡眠剤混入についてわかりやすく解説したいと思います。結果的には、製薬業界の歴史上、一番重い処分を受けることになってしまいました。

小林化工の問題の経緯・時系列

まず小林化工の問題をザッと時系列としてまとめてみましょう。事件が起こってからの対応はかなり早かったようです。

k小林化工問題の時系列

  1. イトラコナゾール錠「MEEK」を服用した患者で健康被害がちらほら報告される
  2. イトラコナゾール錠「MEEK」に睡眠剤の混入を確認(12月5日)
  3. 小林化工は、急遽、イトラコナゾール錠の自主回収を実施
  4. イトラコナゾール錠を処方された患者の死亡が確認される(12月11日)
  5. 福井県と厚生労働省が立ち入り調査にのりだす(12月13日)
  6. 製造手順の不正が判明(12月16日)
  7. PMDA(医薬品医療機器総合機構)も加わり、再度立ち入り調査にのりだす(12月21日)
  8. 患者の健康被害の報告件数はますます増加。最終的には300件近くに。
  9. 業務停止命令(116日間)が出される(2021年2月9日)



イトラコナゾール錠「MEEK」に睡眠剤混入を確認

事件が起こったのは、2020年12月5日です。経口抗真菌剤『イトラコナゾール錠50「MEEK」』に睡眠剤「リルマザホン」が混入しているのが確認されました。

小林化工株式会社(本社:福井県あわら市、代表取締役社長:小林広幸)は、当社が製造販売し、Meiji Seika ファルマ株式会社と販売提携しております経口抗真菌剤『イトラコナゾール錠 50「MEEK」』(製品ロット 番号:T0EG08)を自主回収(クラスⅠ)することといたしましたので、お知らせいたします。

『イトラコナゾール錠50「MEEK」』につきまして、一部ロット製剤(製品ロット番号:T0EG08)を処方された患者様にふらつき、意識朦朧などの精神神経系の重篤な副作用が報告されました。

弊社において調査したところ、製造過程におきましてベンゾジアゼピン系睡眠剤であるリルマザホン塩酸塩水和物が、通常臨床用量を超える成分量の混入が判明しました。

『イトラコナゾール錠 50「MEEK」』(製品ロット番号:T0EG08)を服 用された患者様において健康被害が報告されており、該当ロットについて自主回収(クラスⅠ)することといたしました。

『イトラコナゾール錠 50「MEEK」』(製品ロット番号:T0EG08)を服用されている患者様におかれましては、 直ちに服用を中止していただき、医療機関へご相談いただきますようお願いいたします。

患者様ならびに医療関係者の皆様には、多大なるご迷惑をお掛けしますことを深くお詫び申し上げます。 何卒ご理解とご協力を賜りますようよろしくお願い申し上げます。

引用:自主回収(クラスⅠ)のお知らせ 経口抗真菌剤『イトラコナゾール錠 50「MEEK」』

死亡例が発生してしまった

回収したのにも関わらず、死亡例が出てしまいました。ここで、一気に問題になったという感じですね。

『イトラコナゾール錠 50「MEEK」』を服用された 患者様がお亡くなりになられました

イトラコナゾール錠と睡眠剤の相性が悪い

少し混ざったぐらいでそんな甚大な健康被害が出るの?と思う方もいるでしょう。

それはそうなんですが、今回は、イトラコナゾール錠と睡眠剤「リルマザホン」の相性が悪かったというのが1つ要因としてあります。

私たちの体のなかには「CYP3A4」という分解酵素があります。それが数多くの医薬品の分解にかかわるのですが、今回、混入していた睡眠剤「リルマザホン」もCYP3A4によって分解されるんですね。

一方、イトラコナゾールは、CYP3A4酵素の働きを阻害してしまう作用があります。これ自体はそれほど悪いことではないのですが、問題は、これらが合わさってしまった時に起こるのです。

  • イトラコナゾール:CYP3A4の働きを阻害
  • リルマザホン:CYP3A4の働きにより分解

CYP3A4の働きをイトラコナゾールが阻害してしまうことによって、睡眠剤「リルマザホン」が分解されにくくなり、血中濃度が爆上がりしてしまったというわけなのです。

睡眠剤の効果が予想より大きく出てしまうんですね。こういった現象を薬物相互作用といいます。これがたまたま起こってしまったので、健康被害が大きかったというわけです。

過去最大の行政処分になってしまう…

結果的に、小林化工は過去最長の116日間の業務停止命令になってしまいました。これまでは、化血研の110日が最長でした。

今回の件はかなり悪意があるという判断なのでしょうね。医薬品の品質保証を怠ったという点。経営陣が認識していたのにも関わらず、事態を改善していなかったという点。

  • 品質保証、作業工程の改ざんが継続的に行われていた
  • 経営陣が認識していたのにも関わらず、黙認していた
  • 他の製品も品質保証が担保されていない可能性 など…

単純な「製造上のミスでしたー」では済まされない行為をおこなっています。化血研事件は幸い、健康被害は発生していばかったので、そこも大きい点だと思います。

まとめ

すこしわかってもらえたでしょうか。製薬業界としてもなかなか重大な問題でしたね。今後、こういったことが起こらないようにしてもらいたいなぁというのが正直な気持ちですね。

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めでぃさん
製薬企業の創薬研究にいそしむ一般人。医療業界の観点から最先端テクノロジー、進学・就職活動、経済・金融・資産運用などの情報を発信!